千唐流コラム第一弾は千唐流最強の男が登場!
 空手、そして千唐流に対する熱い想いを自身の過程を通して伝達していただきます。
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 私の千唐流入門のきっかけは、15歳の時、同級生の七井誠一郎(現宗家室国際担当)からの誘いでした。彼とは小学校の剣道部で出会い、その後帯山中学、九州学院と同じ学校に通っていました。
 私は父の指導で5歳から習い始めた「剣道」を中学2年の時に辞めました。それからは、エネルギーの持って行き場がなくなり、喧嘩ばかりしているような学生でした。そんな状況に自分自身も手を焼いていた時期だったと思います。すでに入門していた七井先生に連れられて、千唐流空手の総本部道場を見学しました。
 その訪問で対応していただいたのが、若先生(二代目宗家)です。まず先生のかっこ良さに驚かされました。そして空手の技に魅了されました。こんなに強い人間がいるのかという衝撃から一気にのめり込みました。元々気性が激しく、ブルース・リーに憧れてポスターを見てポーズを真似たり、髪型も似せて襟足を長めにしたりしていましたから、習い始めるとすぐに空手との相性の良さを感じました。先生の強さに憧れ、先生のように強くなりたいとの思いで道場に通いました。
 当時は、初代宗家も時々道場にお見えになりました。七井先生と私に三日月蹴りを教えてくれた姿が記憶に刻まれています。
 それまでは高校で一番の喧嘩ったれだった私が、総本部道場に通い出してから全く喧嘩をしなくなりました。若先生、樋口先生という本当に強い大人に出会ったからです。

 
 私にとって千唐流の一番の魅力は、三年毎に開催される『宗家杯国際空手道選手権大会』です。
選手生活を振り返ると、試合で勝ちたい、大会で優勝したい、宗家杯で優勝したいとの思いがモチベーションになって稽古を続けていました。大会に出場しなくなってからも、生徒達を勝たせたい、宗家杯という舞台を盛り上げたい、自分が体験した宗家杯の素晴らしさを多くの人に感じて欲しいという気持ちが原動力になっています。
 宗家杯の魅力、それは大会規模の大きさです。千唐流で開催される大会の中では当然一番の大きさであり、海外で千唐流を学ぶ会員との交流の舞台になります。国際大会という非日常は、特別な体験と友情をもたらしてくれるものです。

 宗家杯の思い出は、全て忘れられないものばかりです。
1983年、空手を始めて約1年で「第1回宗家杯」に出場する幸運に恵まれました。

 1986年「第2回宗家杯」での打ち上げパーティーの舞台で、クリスとフィルの種田兄弟が見せた二人羽織の芸がとても印象的でした。彼等のパフォーマンスは会場を沸かせ、皆を楽しませました。私にはそれがとてもかっこ良く見えたのです。いつか私もホスト役としてあのときの種田先生のようにパーティーの席で皆を楽しませたいと思いました。それは、昨年(2023年)の「第14回宗家杯」国際交流パーティーで進行役として壇上に上がり、種田先生を開演の挨拶に呼んだときに一緒に叶えることができました。

 参加した宗家杯の中でも初の海外での開催となった1989年「第3回宗家杯」は、私の人生を変えたと思います。その前年に開催された全国大会で優勝していましたので勢いがありました。私にとって初渡航のカナダでした。大会では、団体優勝はしましたが、個人組手の優勝は逃しました。その時に負けた相手はアメリカ代表のガンビーノ先生でした。

 この大会で最も記憶に残ったのが、当時29歳だったロバート・リー先生が大会運営に限らず各国から訪れた選手及び関係者をアテンドする姿でした。あの頃は、今のようにインターネットが普及していませんから、連絡のやり取りひとつとっても大変に困難な作業だったはずです。その中、リー先生は、生徒達と力を合わせて、大イベントを成功に導きました。今考えても驚くべき偉業です。

 私は大会終了後、2度に渡り渡航して9か月間リー先生宅に滞在し、道場生達と一緒に稽古をしました。このときの体験から得た学びは、現在に至るまで私の考え方に大きく影響しています。それだけリー先生と生徒の皆さんのおもてなしには感動しました。
 バンクーバーでは毎朝近くの山に行きました。大自然の彼方に見える都会の街並みを眺めながら、いつか仕事で海外に出るという目標を持ちました。それは14年経って、在サンクトペテルブルク日本国総領事館への赴任という形で叶いました。

 このカナダバンクーバーの大会で一緒に海を渡った選手の中に田中先生(千龍門)、益田先生(誠信塾)、そして佐々木先生(現日本千唐会統括本部長)がいます。国内の大会では鎬を削り、宗家杯では日本代表チームを組みました。宗家杯を一緒に経験すると特別な絆が生まれます。

 第4回宗家杯は、オーストラリアでの開催でした。
 第5回宗家杯では、試合中にアキレス腱を断裂しました。
 第6回宗家杯では、大阪刑務所(瞬会)のメンバーを率いてトロントに行きました。
 …宗家杯はこれまで14回開催されていますから、振り返ると様々な思い出があり書き出せば、紙面が足りません。このように宗家杯から受けた恩恵は計り知れないものがあります。

 特に「友情」と「思い出」が大きな宝です。ずっとずっと大切にしていきたいです。

 ここまで書いた「宗家杯」も『千唐流』という空手流派があるからこその存在です。
 宗家杯への思いはそのまま千唐流への感謝になります。
 私にとって千唐流は、空手道を学ぶことを通じた人生を謳歌させるための舞台であり、そこに集う仲間との関係性をつなぐものです。これほど人生に影響を与え、長く強い絆を感じる人間関係を構築するものは他にありません。

 さて、現在国内における千唐流の会員数が減少の一途をたどっています。それを海外の先生方も憂いています。海外の先生方からすれば、在本部道場の日本はいつでも目標であって欲しいはずです。世の中の少子化問題が進む中、会員数を増やすことは至難の業ですが、それに正面から取り組んでいる先生方がいます。世代交代を成した千唐流はまだまだこれからです。

 今年4月から約1ヶ月に渡り、オーストラリアから10名を超える生徒さん達が本部道場に滞在し、稽古を積みました。期間中朝晩2回の練習は身体への負担が大きかったと思いますが、みなさん最後まで熱心に励んでいました。私は4回ほど組手の指導を担当しましたが、彼らの笑顔を見るのがとても嬉しく、貴重な体験をさせてもらったと思っています。この企画に携わった皆様に心から感謝申し上げます。特に樋口道場・輝火塾のみなさまは多くの時間を共にしたと思います。佐々木先生の統率力が光っていました。素晴らしかったですね。きっと未来につながっていくことでしょう!

 今回ホームページのリニューアルに際して、第1回目の投稿者に選んでいただきありがとうございました。今後も色々な先生方のお話がここで展開されていくでしょう。それを楽しみにする生徒達が増えるといいですね。
          
                         輝竜館 仲村竜一