令和7年1月1日、謹んで新春をお祝い申し上げます。
今年最初の月刊モノローグは2回目の登場・仲村竜一先生に自身のライフワークでもある寒稽古滝行についての持論、経験談を迫力ある画像と共に語って頂きました!
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新年あけましておめでとうございます。
2025年の蛇年が、皆さんにとって希望と喜びに満ちた素晴らしい一年になりますように。
私の新年は、滝行から始まります。
元日、もしくは2日に行うようにしています。
空手がきっかけで始めた滝行も、今年で40年を超えました。
引越しも多くしましたので、その時住んでいた場所では、滝以外にも海に入ったり、凍った川を渡ったりしました。
犬鳴山七宝瀧寺(大阪府) http://www.inunakisan.jp/
特に印象深いのは、オリンピック選手も訪れることで有名な『犬鳴山七宝瀧寺』(輝竜館大阪)での滝行や、ロシアに住んでいた時に凍った河を渡ったり、湖に穴を開けて入ったりした経験です。
ロシアでは近くに滝が見つからなかったため、凍った川を渡ることに挑戦しました。
橋の上から多くのロシア人が声援を送ってくれ、笑顔で手を振り返していましたが、後でわかったのは、みんな「やめろ!やめろ!」と叫んでいたことです。
氷の下は水が流れており、落ちたら命はありません。よく無事でした。
川はダメだとなり、次は凍った湖に穴を開けました。流れていない分、安全です。
ロシアの冬は半端ありませんから、ドボンと浸かって外に出ると髪の毛がピンと凍ります。
その時期ロシアに訪れた益田先生、佐々木先生も一緒に体験しました。
サウナで白樺の葉っぱを束ねた鞭で身体を叩かれ、温まったら氷にドボン!
髪の毛を逆立てながら雪の上を走ってサウナへ戻り、また身体を叩かれて、そしてドボン。
その間にウォッカをグビグビ。バシバシ、グビグビ、ドボンを繰り返します。
そのうち一人、二人と脱落していきますが、武道家としての意地の見せ所です。
頑張って続けていると、6週目に突入したときに急に身体がふわふわしてきて、とてつもない恍惚感が訪れました。最近サウナで『整う』が流行っていますが、その何倍も凄い『整う』です。
あの凄い整う体験は、あの時一回きりですね。
2007年からは、西原村の『白糸の滝』で滝行を続けています。
西原村は熊本地震での被害が大きかった地域なので、その翌年の滝行や、硬膜下血腫の手術で頭蓋骨に穴を開けた2か月後に臨んだ滝行は、特別な思い出として残っています。
白糸の滝は霊場としても知られており、若者が心霊スポットとして肝試しに行く場所でもありますが、まだ日が昇る前の暗闇の中、たった一人で滝行を行ったことがあります。これは7日間連続で行いました。
恐怖という感情を克服したいと思ってやったのですが、滝は山の中にあり、そこに一人で行くだけでもとんでもなく怖かったです。
人間はそんな恐怖にも慣れるものですね。三日目くらいからは平気になっていました。
今思うと、なぜあんなことをしたのでしょう(笑)
私が滝行を続ける理由としては、
・年初めに毎年続けているから
・生徒との絆を深める行事として
・大自然との一体感を感じるために
・形や呼吸を整えることの大切さを学べる
・恐怖に立ち向かう勇気を養うため
・捨て身の精神を忘れないため
などですが、一番の理由は、ゾーンを体験するためです。
皆さん「ゾーンに入る」って聞いたことありますか?
ゾーンに入ると起きる現象
「ゾーンに入る」とは、スポーツや仕事などで極度の集中状態に達し、最高のパフォーマンスを発揮することを指します。これは「フロー」や「変性意識」とも呼ばれ、スポーツ選手が驚異的なプレーを見せたり、アーティストが創造的な作品を生み出したりするときに、この状態にあるといわれています。
私が滝行で感じる「ゾーンに入る」状態は、感覚が研ぎ澄まされると同時に凄まじい高揚感が得られます。
滝つぼの中に立ち、水が落ちてくる最上流に目をやると、空と木々と水が自分の中に一気に飛び込んできます。まさに非日常の中にあり、大自然との一体化に清々しい興奮を覚えます。
精神統一して呼吸を整えたら、滝つぼの底まで潜り静かな水底を泳ぎます。
岩に到達したら、足場を確認して激しく落ちる水の中に立ちます。
爆音と冷たい水に全身が打たれ、凄まじい衝撃を感じます。
一瞬息ができなくなるような極限の状況に追い込まれます。
何も考えられないほど必死な中で呼吸を整えていきます。
もう限界だと思いながらも踏ん張っていると、ある瞬間から急に冷たさや苦しさを感じなくなり、このまま何時間でも水の中に立っていられるような感覚が訪れます。
まるでスイッチが入り、脳が覚醒したような感覚になります。頭の中が澄み渡り、視力や聴力が格段に向上します。轟音を立てる水のカーテンの向こう側でこちらを見ている生徒たちの表情や会話までが見聞きできるように感じます。
脳が死を予期する状況では、脳は身体の異常や生命の危機を感知し、自己防衛反応を引き起こします。
滝行では、強い衝撃とともに冷水を全身に浴びるため、脳は生命の危機を感知し、エンドルフィンやドーパミンなどの神経伝達物質を大量に分泌します。これにより、冷たさや痛みが軽減され、精神的な高揚感が得られるのです。
私は総本部の寒稽古で初めて滝行を体験したとき、この不思議な感覚を経験しました。
それ以来、この感覚を得るために滝行を続けています。滝行以外では得ることができない感覚です。
「よくできますね~」と言う人には、滝行の感動を教えてあげたいです。
私にとって滝行は苦行ではなく、楽しみな行事です。
滝行、体験してみませんか。
今の自分を脱皮して、あらたなチャレンジを!