千唐流月刊モノローグも7回目になりました。今回は千唐流国際連盟議長、千葉県の城西国際大学教授で国際経営論などグローバルな視点で人材育成のテーマに取り組んでいらっしゃる国際担当の要、七井先生の投稿です!
【千唐流空手との出会い】
こんにちは、城西国際大学空手道部で指導している七井誠一郎です。どうぞよろしくお願いします。私は、小中高と熊本で育ち、高校生になって本部道場に通いはじめ、もう40年以上が経っています。私が道場に通い始めたきっかけと当時の様子をご紹介したいと思います。
はじめに、本HP運営に尽力しておられる佐々木師範はじめ関係の皆様にこのような機会を頂戴し心より御礼申し上げます。ありがとうございます。また、このモノローグ第一弾で仲村師範から私の名前を出していただき光栄の限りです。お名前を出していただいたこともあって、当時、仲村師範と私が本部道場で一緒に稽古をしていた時の写真をご紹介させていただきます。
(一番左:仲村師範、左から二番目が七井で高校2年生です。そして、高校に留学していたオーストラリア人学生も一緒に本部道場に通っていました。)
私が空手を始めたきっかけは、なんとも不思議なものでした。私の父は、酒造メーカーに勤務するサラリーマンでしたが、当時は1980年代で、「24時間闘うサラリーマン戦士」そのものでした。そんな父が仕事先となる夜の街で知り合った方が、千唐流の有段者で雑誌記者をされていた方で、その方の紹介で私は空手を始めたのでした。
ほとんど家にも帰らない猛烈社員だった父が息子の私に残してくれた偉大なことは、今となれば千唐流との出会いを作ってくれたことと言えます。この父の夜の街での千唐流有段者のとの出会いで、私は、かれこれ千唐流の道を40年以上にわたり歩んでいるのですから、なんともご縁とは不思議なものと感じています。
さて、当時の総本部道場では20代の樋口稔先生が入門したての生徒を担当されていました。 樋口先生は、本部指導員として活躍しておられ、それは、それは向かうところ敵なしオーラが出ていました!その頃の稽古はなかなか厳しいもので、入門したての道場生は私一人だったこともあり、「このまま自分一人ではまずい!」と思った私は、小中高と一緒だった仲村先生を高校の登下校の際に、それはもう必死で、あれやこれやと口説いて千唐流に引きずり込んだのでした。
私と仲村先生が総本部道場に通っていた頃は、今の総本部道場より狭く、初代宗家先生の書斎が道場を見渡せるところにありました。当時、入門したての我々高校生二人が稽古開始までの合間に、稽古で習いたての動作をしていると、その様子を書斎から初代宗家はご覧になっていたようで、書斎の時の家着のままで道場に出てこられて、私たちに手ほどきをしてくださったのでした。
初代宗家の「私のここを突いてきてみなさい。この時はこうやって」と、樋口先生や二代目宗家による稽古が始まるまでの間に私たちに手取足取りで稽古をつけてくださいました。当時、樋口先生や二代目宗家が我々をご指導くださる先生方でしたが、初代宗家が、どんどんいろいろなことを入門したての私たちに教えるので、樋口先生と二代目宗家が苦笑いをされていた場面もよくありました。なかでも初代による金的の上げ下げは、初代宗家のすごさを実感するそのものでした。
宗家杯での写真
これは熊本商科大学(現、熊本学園大学)で開催された宗家杯に参加した時の写真(一番左から七井、初代宗家、二代目宗家、初代宗家の奥様)
熊本商科大学体育館(現、熊本学園大学体育館)当時の大会パンフレットには、熊本近代スポーツの父とも称される宇土虎雄先生(講道館柔道9段)が大会役員名に連なっていました。上の写真は、演武で板割りをしているところです。
私と仲村先生が総本部道場に通っていた頃は初代宗家を「大(おお)先生」とお呼びしていて、二代目宗家は「若(わか)先生」とお呼びしていた時代でした。そして、今でも思い出すのは、初代宗家が道場の真ん中で、まだ赤ちゃんだった三代目宗家の足を動かしているのを覚えています。
「大先生、何をしているのですか?」とお尋ねしたら、蹴りを覚えさせていると答えられたのには、本当に驚きました。赤ちゃんの足で前蹴りや横蹴りの形を作っていました。もちろん、赤ちゃんだった三代目のご記憶にはないでしょうが、初代から三代目も稽古をつけてもらっていると思った微笑ましい記憶です。
その後、私は大学進学で上京し、進学した国際基督教大学のある三鷹市で、直真塾道場を主宰する中山隆嗣先生の下で稽古を継続することができました。
中山先生の下での稽古は、千唐流空手道を武道体系の中に位置づけて研究対象としながら稽古をおこなうもので、大学生であった私を魅了するものでした。そして、その先生の研究熱心な姿勢に影響を受けて、大学教員の道へと進む契機となりました。
さて、二代目宗家より「三代目宗家襲名披露」の行事を仲村先生と共に企画運営の大役を一昨年の2022年に仰せつかりました。そして、昨年8月に国内外の諸先生方が一堂に会し、また沖縄剛柔流拳志會の外間哲弘先生にもご出席を賜りまして、三代目宗家千歳強直先生の襲名披露の奉告祭と襲名披露のお祝いの会を開くことができましたことを光栄に思っております。
(三代目宗家継承奉告祭の打ち合わせをするふたり)
私の千唐流との出会いは本当にちょっとしたご縁が、こうして大きく膨らんでこんにちに至っています。それは、小学校からのかけがえのない友と千唐流空手道を共に続けられること、そして、素晴らしい師たちに恵まれ、国内外の諸先生方や道場生、そして、そのご父母の皆様たちとも出会え、仲間になれたことに本当に感謝しています。千唐流の「和忍の心」を大切にしながら、日本の次代を担う若い人たちにこの千唐流の輪(和)に入ってもらい、伝統ある千唐流空手道を伝承できるように努めて参りたいと思います。
2026年8月15日からオーストラリアのゴールドコーストで開催される宗家杯に一人でも多くの日本人選手たち、そして多くの海外の選手が集まれるように国際連盟議長の仕事も頑張って参ります。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。