9月になりましたがまだまだ猛暑が続いています。
 熱中症等注意して、しっかりと体調管理を行いながら、日々の空手稽古を頑張りましょう。
 今回のモノローグは千唐流のラスト・サムライ、樋口稔先生の投稿です!

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『古武術との出合い』 

 私と古武術との出合い。それは私がまだ千唐流の空手を始めて三年目くらいの頃だったと思います。
 その頃はまだブルース・リーやジャッキー・チェンの映画で、ヌンチャクや棒等を振り回しているのを見て、カッコ良い、自分もあんな事が出来たらいいなあと思う程度でした。
 そのような頃に一枚の写真と出合いました。
 皆さんの中にも見た事がある人もいるかと思いますが、それは1970年の大阪万博の会場で演武をした時の記念写真でした。


 
 その写真には、初代宗家を始め数多くの先輩、先生方が、手に手に色々な武器等(棒、釵、ヌンチャク、櫂)を持った写真でした。
 私はこの写真を見た時に衝撃と驚きを感じました。
 それは、千唐流にもこのように棒や釵をする人がいるのだという事でした。
 後に、このように武器を使う空手を古武術という事も知らされ、益々驚き、この古武術を習ってみたいという気持ちがどんどん大きくなってきました。

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(2010年の宗家杯での古武術特別演武)

 当時、私はまだ東京で普通のサラリーマンで、時間を見つけては空手の練習をするという毎日でしたが、どうしても三段や四段の高段位になりたくて、時々熊本の本部道場に行き練習していました。
 そして、自分自身では棒が一番手に入りやすかったので、色々な本などを参考にして見よう見まねで棒を振るようになっていました。
 熊本の本部道場で練習をしていた時、ある先生と古武術の話が出て、以前は古武術の練習をする人も多かったが、今はあまりいなくなったと聞かされました。
 それでも、私は棒の振り方を習いたいと思い、その先生に棒の基本の振り方、正面切り、裏打ち、下段受け、下段払い等を習い、それを東京に戻り一人でコツコツと練習していましたが、なかなかうまくいかず、ついに仕事をやめ、本部道場で内弟子になる事を決意しました。

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(イベント・サムライ祭り2での釵演武)

 そして、本部での毎日の練習が始まりました。
 もちろん、空手の練習もしながら、古武術の練習も、棒は基本はもちろん佐久川の棍、ヌンチャクの振り方、サイの基本と増えていきましたが、なかなかうまく出来ない毎日が続きました。
 そんな時、今の二代目宗家からもっと重い物(鉄棒)を振りなさい、と教えられ実行しましたが、始めのうちは重くて数回しか振れずにいました。
 その内、徐々に、楽に20回、30回と振れるようになって出来ているのに気がつき、そして棒の決めも少しずつ決まるようになって来たと感じるようになっていきました。
 手の力が抜け、腰で振るようになっていたのだと思います。
 そして、これは空手に通ずるのではないかと思うようになり、空手ではよく腰で突けというのを聞いた事があると思いますが、それと同じ事ではないかと思います。
 その頃から私の空手も変わってきたように思います。

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(2006年の創流60周年記念演武会での釵演武)

 古武術は、それぞれの武器を手に持って力を発揮します。要するに、武器は手の延長線上にあり、空手の突きや受けと同じ事のように思うようになっていたのです。
 以上、長くなりましたが、古武術の技と空手の技は相通ずるものがあると思うようになり、私と古武術との出合いは私の空手の技術を大きく成長させる事となったと思っています。


(現在、国内外各地で精力的に古武術の指導に奔走する樋口先生)