3月になり、春の訪れを感じさせる季節になりました。
 2025年度の最後は、先月増渕杯でも盛り上がりを見せた栃木県正和塾・赤津美香先生からの投稿です。

 皆さま、お世話になっております。栃木正和塾の赤津美香と申します。
 この度コラムのお話を頂戴しました際に『私でよろしいのでしょうか?』と大変恐縮な気持ちでしたがお声かけいただいたことに感謝し、投稿させていただきます。

 私が空手道を初めたきっかけは、指導者である父の存在です。

 父は決して生徒を見捨てることのない人でした。一人一人に必ず芽が出ると信じ、その時を焦らず待つ。
 小さな成長にも気づき、どんな日も必ず全員に声をかける。
 そして、たとえ厳しく叱った日でも、帰りには必ずその日の稽古でよかったところを見つけて褒め、笑顔で道場を後にさせていました。

 私たち姉弟に対しても、父は同じでした。
 空手を強制することは決してなく、常に自らの意思を尊重してくれました。
 その温厚さに触れながら育った私は、父の背中を見て『強さとは技や力ではなく、心で人と向き合うこと』だと学びました。

 そして…その姿を見てきた私は、少しでも父に近づきたいと願いながら今道場に立っています。
 けれど、どれだけ努力しても私は父ではありません。未熟さに自信を無くすこともあります。
 それでも、父から受け継いだ『一人一人に真剣に向き合う心』だけは、これからも大切にしていきたいと思っています。

 生徒が十人いれば、十通りの指導方法があると思っています。
 その子にあった伝え方を探し続けること。
 焦らず芽が出る瞬間を信じること。
 上達がゆっくりな生徒の保護者に『やめさせようと思います』と言われることがあっても
 『もう少し一緒に待ちましょう』と寄り添うこと。それが、父から学んだ空手道の在り方です。

 父が体調を崩してからは、道場を支えて下さる多くの先生方、保護者の皆さんに助けて頂きました。
 稽古の補助をして下さる方、技術を教えて下さる方、道場の運営を支えて下さる方…
 一人ひとりの力があって、私も安心して学び、指導に向き合うことが出来ました。
 そのおかげで、父の想いを受け継ぎながら、私も道場に立ち続けることが出来ています。
 支えて下さるすべての方へ感謝の気持ちは、決して忘れることはできません。

 少しでも早く父を安心させたい…その気持ちが私の原動力です。

 たくさんの笑顔を見られる道場でありたい。
 努力が実を結ぶ瞬間に立ち会える指導者でありたい。

 父の背中を胸に刻みながらも、父ではない私として、
 支えて下さるすべての方へ感謝を忘れずに、
 日々一歩一歩、確かに前へ進みながら成長し、いつか父が安心して見守れる道場を作りたいと思います。